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【中国知財情報】2026年11月2日|PCT公開から読む中国企業の海外特許戦略

中国企業の海外特許戦略とPCT国際出願を表現したイメージ

CHINA IP WEEKLY|DEEP DIVE

今週の結論:中国企業の海外特許は、PCT公開を起点に早く読む

中国国家知識産権局(CNIPA)とWIPOは、海外特許ポートフォリオを主題とするPCT実務セミナーを10月末に開催しました。日本企業にとって重要なのは、PCTを「世界共通の特許」だと誤解せず、海外展開の意図と将来の各国移行を早めに把握する情報源として使うことです。

CNIPAは2026年10月29日、WIPOと共同で、長春において「PCT高度巡回普及会」を10月27日に開催したと公表しました。WIPOの公式案内によれば、この中国でのプログラムは10月27日の長春に続き、10月29日には南京でも実施されました。内容はPCT出願、国際調査、国際予備審査、補正、各国段階への移行などです。CNIPAが海外特許ポートフォリオと国際競争力の向上を正面から扱っていることは、中国企業の海外展開に伴う知財実務の重要性が高まっていることを示す動きです。

DEEP DIVE|PCTと海外特許ポートフォリオ

最重要ニュース:PCTを通じた海外特許戦略への支援が続く

何が起きているのか

今回のセミナーは、法改正や新しい出願義務を発表するものではありません。一方で、CNIPAとWIPOが共同で、PCTを使った出願、国際調査、国際予備審査、各国段階への移行を実務テーマとして取り上げた点に注目する必要があります。CNIPAの発表によると、政府、企業、大学、研究機関、法律事務所、代理機関から170人以上が参加しました。

PCTは、一つの国際出願により、多数の締約国での特許保護を求めるための手続です。ただし、PCT出願そのものが「世界共通で成立する特許」を与えるわけではありません。WIPOによれば、特許を付与するかどうかは、最終的に各国・地域の特許庁がそれぞれ判断します。通常、優先日から30か月までに、保護を求める国・地域で各国段階の手続を取り、費用、翻訳、必要に応じて現地代理人の対応を進めます。

なぜ日本企業に重要か

WIPOの2026年PCT年次レビューでは、2025年のPCT国際出願は世界で27万5,900件でした。このうち、中国居住者による出願は7万3,718件で国・地域別に最も多く、前年から5.3%増加しました。日本居住者による出願は4万7,922件です。中国を発信地とする海外出願が大きな規模で続くなか、中国の競合企業、取引先、共同研究先の調査を中国国内の公報だけに限定すると、将来の日本・欧州・米国などへの展開の兆候を見逃すおそれがあります。

国際公開、国際調査報告、見解書は、競合技術を評価する重要な材料です。ただし、これらは各国での権利成立や権利範囲を確定するものではありません。PCT公開を発見した後に、どの国・地域へ実際に移行したか、補正でクレームがどう変わったか、各国でどのような判断が出たかまで追うことが、実務上の要点です。

今週から準備すべきこと

まず、自社にとって重要な中国企業、技術キーワード、出願人表記の揺れを整理し、PCT公開を定期的に確認する対象を決めます。次に、発見した案件について、発明の概要だけで終わらせず、国際調査報告と見解書、優先権、想定市場、各国段階への移行状況を一つの管理表で追えるようにしてください。

中国企業と共同開発を行う案件では、誰がPCT出願を行うのか、どの国・地域で各国段階へ進むか、その費用を誰が負担するか、補正や放棄の判断を誰が行うかを、成果の帰属と併せて契約で確認することが重要です。PCTは海外での権利取得を自動化する制度ではなく、国ごとの事業判断を行うための時間と情報を確保する手続として捉えると、実務で活用しやすくなります。

原典:2026年PCT高度巡回普及会(長春) / 原典:WIPO・CNIPA PCT高度巡回セミナー案内 / 原典:WIPO PCT制度FAQ

数字で見る:海外出願の競争情報は、中国発の公開を外せない

2025年にPCTを通じて出願された国際特許出願は27万5,900件でした。中国居住者による出願は7万3,718件、日本居住者による出願は4万7,922件です。また、PCT受理官庁としてのCNIPAは7万8,648件を受理しました。前者は出願人の居住地別の数、後者は受理官庁として受け付けた数であり、同じ指標ではありません。

国際段階では、国際調査報告と特許性に関する見解書が作成されます。WIPOは、これらが後の特許取得・事業判断のための重要な情報になると説明しています。競合調査では、公開公報の件数を数えるだけでなく、国際調査の引用文献と見解、さらに各国段階の手続状況を分けて確認してください。

原典:WIPO PCT年次レビュー2026(2025年実績)

日本企業向け:5項目の実務チェックリスト

  1. 監視対象を絞る。 競合企業、協業先、主要技術、製品名、発明者を整理し、PCT公開の確認対象を決めます。
  2. 公開後に読む資料を決める。 要約・クレームだけでなく、国際調査報告、特許性に関する見解書、補正の有無を確認する運用にします。
  3. 各国段階を追跡する。 PCT公開は権利成立の結論ではありません。中国、日本、欧州、米国など、事業に関係する国・地域での移行と審査状況を確認します。
  4. 共同開発契約を点検する。 国際出願の名義、各国段階に進む国、費用、補正・放棄の判断、第三者へのライセンスを、成果の帰属と一緒に確認します。
  5. 事業判断とつなぐ。 出願データを法務部門だけで管理せず、研究開発、事業、営業の担当者へ、重要案件と想定市場を共有します。

QUICK UPDATES|関連する短報

今週あわせて確認したい2件

地理的表示:29の保護模範区の設立案を公示

CNIPAは10月27日、「茶淀玫瑰香葡萄」など29の国家地理的表示保護模範区を設立する案を公示しました。これは最終決定前の公示で、意見募集は11月2日までです。中国の地理的表示を用いる食品、酒類、農産品、地域ブランドと関わる企業は、正式決定後の対象地域における保護・運用の取組を確認してください。

原典:29の国家地理的表示保護模範区の設立案に関する公示

涉外知財実務:国際仲裁・海外特許プール・欧州特許訴訟を扱う公開講座

CNIPAは10月28日、11月の公益講座を「涉外知的財産実務」テーマで開催すると公表しました。11月6日は国際仲裁と越境知財紛争、13日は海外特許プールと特許ライセンスの動向、20日は欧州特許裁判所の訴訟手続を扱います。制度変更ではありませんが、中国側でも海外ライセンス・紛争対応への実務関心が高いことを示す情報として確認しておくとよいでしょう。

原典:2026年11月公益講座計画「涉外知的財産実務」

本文の重要用語:日中対訳リスト

本文に登場する実務上の重要用語だけを整理しています。

日本語 中国語(簡体字)
特許協力条約 专利合作条约
国際特許出願 国际专利申请
国際調査報告 国际检索报告
国際予備審査 国际初步审查
各国段階 国家阶段
海外特許ポートフォリオ 海外专利布局
特許性に関する見解書 专利性书面意见
特許プール 专利池

本記事は、公開されている一次情報に基づく一般的な情報提供です。PCT出願の国・地域選定、各国段階への移行、共同開発の権利処理、特許侵害の判断は、技術内容と取引形態によって対応が異なります。具体的な案件は各国の資格を有する専門家にご相談ください。

ABOUT ME
しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。