知的財産権

発明特許出願は早期に公開すべきなのか?

発明特許出願ができるだけ早く登録を受けられるように、出願と同時にその特許出願の早期公開を請求する出願人もいます。このようにすると、出願は提出後3~6ヶ月前後で公開され、実体審査手続に入ります。普通なら出願日から18ヶ月を経て公開されるので、これに比べると早期公開の場合は少なくとも1年間早く実体審査に入れます。

湯國華

 どんな発明の出願でも早期公開に向いているわけではありません。

 出願人において自らの実情に基づき発明特許出願を早期に公開するかどうかを検討することをお薦めします。

早期公開がもたらす可能性のある問題

 まず、発明内容の早期公開は同一の出願人のその後の出願の登録に不利な影響をもたらす可能性があります。

 例えば、出願人がある技術分野において持続的な研究開発を展開し、研究開発の進展に伴い、技術的には関連性又はオーバーラップがあるものの、相互に独立した複数の特許を一定の期間内に出願することがあります。1件目の出願が提出後3から6月後に公開された場合、公開後に提出する特許出願にとって、この1件目の出願は従来技術となり、後に提出する特許出願の新規性と進歩性の評価に用いることができ、最悪の場合は、後願が新規性又は進歩性の欠如により登録を得られないという結果につながります。一方、早期公開を選択しない場合、1件目の出願は18ヶ月を経て初めて公開されます。当該期間に提出する後願は1件目の出願の影響を受けないので、さきほど話したリスクはありません。

 次に、発明内容の公開が早すぎると、公開される技術をノウハウとして保護する可能性を失ってしまいます。

 出願を提出した後、万が一方針を変えて、特許ではなくノウハウとして発明を保護したくなったり、出願内容が公開すべきでないものに係っていると考えたりした場合、出願人は公開前に特許出願を取り下げることができます。しかし、特許出願が一旦公開されると、発明内容は公衆に知られ、いまさら特許出願を取り下げても、関連技術はもうノウハウとして保護を受けることができません。また、発明内容の公開が早すぎると、出願人の最新の研究開発の動向を競合相手に早期に知られてしまうおそれもあるので、自らの発明を急いで公開しようとしない出願人もいます。

 最後に、早期公開によって、発明が海外で特許の保護を受ける機会を失うおそれもあります。

 一般的には、国内で最初の出願を行った後、パリ条約に基づき12ヶ月以内は他国での特許出願の優先権を主張できますが、出願人が12ヶ月の優先期間を過ぎてはじめて国外への出願を思いついた場合には、もう優先権を主張できません。ただし、救済方法の一つとして、国内出願が公開されるまでに出願を取り下げ、改めて出願すれば、優先権を主張してその他の国へ出願することができます。しかし、国内出願が12ヶ月以内に公開されて従来技術となってしまうと、原出願を取り下げる方法が使えなくなり、国外に出願する際に優先権を主張できなくなるため、新規性の欠如により登録を得られません。

早期公開は同一出願人の後願の登録に不利な影響をもたらす可能性がある。

早期公開によって公開される技術をノウハウとして保護する可能性を失う。

早期公開によって発明が海外で特許の保護を受ける機会を失うおそれもある。

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しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。