2021 年度華誠代表知財案件

「UL」商標権侵害紛争再審判決検察監督事件


——(2020)粤民再 364 号

 民事訴訟法の規定によれば、当事者は再審判決に対して再び再審請求をすることができない。しかし、再審事件に依然として誤りがある場合、当事者は検察監督手続を開始し、検察院に検察監督を申し立てることができる。そして、検察監督手続には同じく二審制がある。事件の当事者が検察監督手続の申立を開始して上手くいかなかった場合は、一級上の検察院に再び申し立てることができる。

  一連の「UL」悪意の訴訟事件は知的財産権訴訟分野においてベンチマークとしての意義を有
し、実体面の内容だけでなく、手続法の面でもかなり飛躍性がある。このうち、再審が済んで
いる事件に対して検察監督手続を通じて再審を再び開始した事件は国内初である。

一連の「UL」悪意の訴訟事件のうち、原告側が深圳の裁判所にて提起した訴訟において、深圳市の基層人民法院および第二審の深圳市中級人民法院はいずれもユニクロが商標権侵害に該当すると認定し、賠償責任を負うよう命じる判決を下した。これを受けて、ユニクロは広東省高級人民法院に再審請求をし、広東省高級人民法院は深圳市中級人民法院に再審を行うよう命じた。深圳市中級人民法院は再審において、ユニクロは権利侵害に該当すると認定したものの、 原告が登録商標を実際に使用していないことを理由に、ユニクロは侵害責任を負担しないとの判決に変更した。中国は二審制を採用しており、発効した第二審判決に対して、当事者は再審請求を 1 回しか提起できず、再審はほぼ民事訴訟の終局的な裁定と言える。

しかし同時に、最高人民法院は一連の「UL」悪意の訴訟事件のうち、既に発効している上海高級人民法院の判決について再審を行った結果、原告が悪意の訴訟に該当すると認定し、ユニクロは権利侵害に該当しないとの判決に変更し、原告の訴訟上の請求をすべて棄却した。当該事件の当事者、訴訟の事由、事件の状況は前述の深圳事件と同様である。これをきっかけに、 ユニクロは深圳市中級人民法院の再審判決に対する検察監督を深圳市人民検察院に申し立てた。深圳市人民検察院は審査を経て、ユニクロの申立を却下した。これを受けて、ユニクロはさらに広東省人民検察院に再審査を申し立てた。広東省人民検察院は再審査の結果、2020 年 4 月に広東省高級人民法院に対して民事抗訴書を発行し、深圳市中級人民法院の再審判決は法律の適用に誤りがあると認定し、法により再審するよう広東省高級人民法院に求めた。

 最終的に、広東省高級人民法院は 2021 年に深圳市中級人民法院の再審判決につき再審を行い、 ユニクロは権利侵害に該当しないとの判決に変更し、原告の訴訟上の請求をすべて棄却した。

 本件からの示唆としては、再審判決に依然として誤りがある場合、検察監督手続を通じて実行可能な救済ルートを求めることができる。

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しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。