2021 年度華誠代表知財案件

複数の工程パラメータにより限定された方法特許は、全体からその進歩性を考慮する


—— 国家知識産権局無効請求審査決定第 51308 号

方法特許において、複数の工程パラメータの組み合わせによって新しい技術的効果が生じた場合、すべての工程パラメータを 1 つの完全な技術案と見なさなければならず、工程パラメータが複数の文献の従来技術で別々に開示されているからといって、請求項の技術案が進歩性を具備しないと認定することはできない。

事件紹介

  本件は、リチウムイオン電池用三元系正極材料、具体的には Ni-Mn-Co 三元系リチウム遷移金属酸化物材料に関するものである。

  係争特許の請求項 10 は高 Ni の正極材料 LiMO2(M=Ni−Mn−Co)を製造する方法に関するものであり、反応前駆体 MOOH と Li2CO3 を混合した後に焼結を行う際に、1混合物2m3/kg 以上の空気流量で、2800°Cと1000°Cの間の温度制御の下、312時間と40時間焼結し、そして4反応においてCO2が発生しなくなった時に反応を終止する、を含む制御すべき工程パラメータが複数ある。

  無効審判請求人は、係争特許の反応式計量比に合致する、MOOH と Li2CO3 が混合物2m3/kg 以上の空気流量、900°Cで 10 時間焼結する工程が従来技術の証拠 1 で開示されており、焼結反応は800〜1050°Cで 5〜15 時間進行するのが望ましいことが従来技術の証拠 2 で開示されている、と主張した。当業者が証拠 2 と証拠 1 を組み合わせて請求項 10 の製造方法を得る動機があるか否かが、本件の鍵となった。

  特許局復審・無効審理部は審理の結果、次の認識を示した。
1. 証拠 1 では請求項 10 の反応終 止条件が開示されていない。
2. 本特許の焼結温度、反応時間、空気流量および反応終止条件は互いに関連しており、いずれも欠くことができない。これらの条件は反応が完全に平衡状態に達して平衡 SBC を得られるか否かを決定するため、これら4つの工程パラメータは切り離せず 1 つの全体の工程と見なさなければならない。
3.証拠 2 では 5〜15 時間の焼結時間が開示されているが、反応終止の条件、およびもうCO2 が発生しない平衡状態になるまで反応が進行するか否かにはフォーカスしていないため、請求項 10 の技術案とは全体において異なり、請求項 10 の技術案は証拠 1 と 2 の組み合わせと比較して進歩性を具備する。

 本件は、複数の工程パラメータを含む方法特許の進歩性の判断に係るものである。複数の工程
パラメータが相互に関連し、有機的に組み合わさっている方法発明については、技術的効果を無視し、相互に関連している工程パラメータを機械的に複数の独立したパラメータの特徴に簡単に分割して個々に扱ってはならず、工程パラメータが複数の文献の従来技術で別々に開示されているからといって、請求項の技術案がこれらの従来技術の組み合わせと比較して進歩性を具備しないと見なすことはできない。
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しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。