2022年度華誠代表知財案件

ジョルジオ・アルマーニ事件――刑事事件の被害者も民事の権利侵害責任を負う必要がある

——(2021)滬73民終432号

 第一被告は、アルマーニ社のブランド・デザイナーであると自称し、ジョルジオ・アルマーニおよびアルマーニ社の名義で授権書を発行していた。

 第二被告は、第一被告の提携パートナーとして、Weiboやブログ、さらに第一被告の自伝本『天衣無縫』の出版手配を通じて、その虚偽の身分を宣伝し、同人名義の会社を通じてパートナーや加盟店の開拓を行い、偽の「アルマーニ」ブランドによるアパレルオーダーメイドサービスを提供していた。

 事件が発覚した後、第二被告は自己保身のために、第一被告を契約詐欺罪で公安局に告発。その後、北京市昌平区人民法院は、第一被告に対して契約詐欺罪の成立を認定し、有期懲役の判決を下した。

 これを受けて、ジョルジオ・アルマーニおよびアルマーニ社は、不正競争行為を理由として両被告を提訴した。

 第一審の民事判決では、両被告の行為が虚偽の宣伝に該当し、また他人の高い影響力を有する企業名や氏名を無断で使用した不正競争行為と認定され、賠償責任を負うべきと判断された。

 これに対し、第二被告は上訴。その理由は、「第一被告が刑事判決で身分を詐称したことが既に認定されており、自身はその事実を知らず、むしろ被害者であり、主観的に過失はない」との主張であった。

 しかし、第二審裁判所は次のような判断を示した

  • 第二被告(上訴人)は、第一被告の刑事事件の被害者ではあるものの、係争商標およびジョルジオ・アルマーニの高い知名度を踏まえれば、慎重な確認が当然求められる立場にあった。
  • 第二被告はアパレル業界に長年従事してきた高学歴の経営者であり、第一被告の身分や授権書を審査・確認する責任と義務があった。
  • 第一被告が提供した授権書には明らかな瑕疵があったにもかかわらず、それを放置し、さらにその虚偽の身分を積極的に利用してプロモーションを行い、サービス提供まで行った。
  • その結果、侵害行為の影響を拡大させたことは明白であり、第二被告にも過失があると認定された。

 以上により、第二審裁判所は、第二被告は第一被告と共同で本件における民事賠償責任を負うべきであると判断し、上訴を棄却、第一審判決を維持した。

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しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。