A社は、ロックウール製品に関して登録された文字商標の権利者であり、B社は訴外人から耐火材に関する文字・図形の結合商標の使用許諾を受けている。この結合商標の文字部分は、A社の文字商標と同一であるものの、商標全体として主に識別される要素は異なっている。
両社が保有・使用している登録商標は同一でも類似でもなく、また、それらが使用されている商品区分も同一または類似ではない。
A社は過去に、B社が自社の文字商標を侵害したとして、裁判所に訴えを提起した。
その理由は、B社が製造・販売するロックウール製品に、当該文字商標を目立つ形で使用しているというものであった。
これに対しB社は、耐火材に関しては正当に使用許諾を受けた文字・図形の結合商標を使用しているにすぎず、A社の文字商標を侵害していないと抗弁した。
しかし審理の結果、裁判所は次のように認定した:
- B社が使用していた商品はロックウール製品であり、これは許諾対象の商品(耐火材)とは異なる。
- B社は、許諾を受けた結合商標のうち「文字部分のみ」を抜き出して独立して使用し、かつ®表示を付けていた。
- よって、商標の規範的な使用には該当せず、商標法に違反する。
その結果、B社の行為はA社の文字商標に対する専用権の侵害に該当すると判断された。
この判決後、B社はA社に対する報復的意図をもって訴訟を提起した。
B社は、ロックウール製品は耐火材に該当し、A社がそのロックウール製品に自社の文字商標を使用していることは、B社が使用許諾を受けた文字・図形結合商標と類似の商標を同一の商品に使用していることになり、商標権を侵害していると主張した。
しかし、前訴訟においてB社自身が、A社が当該ロックウール製品に文字商標を合法的に使用していることをすでに認識していたことが明らかであり、
それにもかかわらず訴訟を提起したことは、明確な悪意に基づくものであると評価された。
これに基づき、A社は反訴を申し立てた。
審理の結果、裁判所は、B社による訴訟行為は「権利の濫用」に該当し、悪意ある訴訟であると認定した。
したがって、B社は、A社が本件訴訟の対応のために支出した合理的な弁護士費用、交通費、飲食・宿泊費などを賠償すべきであるとの判決が下された。