2022年度華誠代表知財案件

貨物の輸送と荷卸しを制御する装置の発明特許権侵害訴訟事件

——(2021)滬73知民初330号

 本件は、貨物の輸送および荷卸を制御する装置および輸送箱に関する発明特許に関するものである。
 係争特許の請求項1における区別される技術的特徴は、「この連結部材は、第1斜板の傾動運動を第2斜板に加えることができ、かつ適している」という記載である。

 特許明細書によれば、当該技術的特徴を実現する具体的な実施形態は、以下の2つである:

1)連結部材が、両斜板の間に設けられた連結ロッドである場合:この連結ロッドにより両斜板が連結され、斜軸に対して偏心回転し、第1斜板の傾動運動が連結ロッドを介して第2斜板に加えられる。

2)連結部材が、両斜板の間に設けられた互いに噛み合う径方向の歯である場合:第1斜板の傾動運動が、これらの歯を介して第2斜板に加えられる。

 一方、被疑侵害製品の連動機構には、垂直レールおよび2つの垂直スライダー、水平レールおよび2つの水平スライダーが含まれている。

 垂直レールと垂直スライダーは移動副を構成し、水平レールと水平スライダーもまた移動副を構成している。垂直レールは支柱に連結され、垂直スライダーは水平レールに固定されており、両斜板は、斜板と同じ側にある水平スライダーにヒンジ結合されている。

 これにより、連動機構の水平方向および垂直方向の動きにより、対称に設けられた2つの斜板が同時に開閉することが可能となっている。

 本件請求項1には、「第1斜板の傾動運動を第2斜板に加えることができ、かつ適している」という機能のみが記載されており、この機能をどのようにして実現するかに関する具体的な構造や方法は記載されていない。

 そのため、当該請求項を読むだけでは、当業者がこの機能を実現するための具体的な手段を直接かつ明確に特定することはできない。
したがって、当該技術的特徴は**「機能的特徴」**であると評価される。

 機能的特徴については、司法解釈において以下のように規定されている
 被疑侵害製品の技術的手段(技術方案)が、特許明細書および図面に記載された相応の機能または効果の実現に不可欠な技術的特徴と比較して、

  • ほぼ同一の手段を用いて、
  • 同一の機能を実現し、
  • 同一の効果を達成し、
  • かつ当業者が創造的労働を経ることなく想起できる

場合に限り、技術的特徴が同一または同等に該当すると認定される。

 本件では、被疑侵害製品はレール方式を採用しており、特許の軸または歯車方式とは技術手段が異なる。

 さらに、被疑侵害製品の両斜板は同期して運動しており、一方の斜板の傾動運動が他方の斜板に加わるという構造ではないため、実現される機能や効果にも違いがある。
したがって、当該技術的特徴は、同一または同等には該当しない。

 以上を踏まえ、裁判所は、被疑侵害製品が係争特許の保護範囲に含まれないと認定し、原告のすべての訴訟上の請求を棄却する判決を下した。

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しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。