2021 年度華誠代表知財案件

Theory 商標権侵害および不正競争紛争事件

——(2020)滬 73 民終 87 号

実際に使用した商標が登録商標から実質的な変更があった場合は、一般に商標権侵害とみなされない。しかし、実際に使用した商標が権利者の登録商標を完全に含んでいる場合は、権利者の登録商標を目立つように使用したこととなり、権利侵害に該当する。

 Theory は第 25 類の被服製品に文字商標を登録している。ある企業が 2014 年に Theory のサブブランドである「Theory Luxe」を模倣して、第 25 類の被服に文字・図形の結合商標「」を登録し、被告に使用を許諾した。その後、被告は販売時に、ニューヨークから来たブランドであると自称し、Theory の若年層向けのシリーズであると主張した。また店舗では背景模様のない「theory luxe」という文字を使用し、製品には背景色を変えた 2 種類の商標「 」 と「 」を使用した。

 本件の争点は、被告が他人から許諾された登録商標を使用する際、その背景色を変更しており、主な文字部分に権利者の登録商標の全ての文字内容が含まれていることが商標権侵害に該当するか否か、ということである。

 第一審裁判所は次の認識を示した。被告が使用した標章は使用を許諾された登録商標と比べて実質的な変更があるものの、争議に係る両者の登録商標と比べると、変更後の商標は使用を 許諾された登録商標のほうにより近い。よって、原告の登録商標「Theory」との類似に該当せず、原告の訴訟上の請求をすべて棄却した。

 第二審裁判所も被告は使用を許諾された登録商標を使用していないと認定したが、実際に使用した標章の顕著な部分は「Theory Luxe」という文字であり、原告の商標「Theory」を完全に含んでおり、商標権侵害に該当するとした。また、第二審裁判所は消費者の混同の事実も認定し、被告が権利を侵害しており、原告の経済的損害として300 万元を賠償することとする判決を下した。

 登録商標の使用の規範化は法によって求められており、登録商標の形態を変えて使用した場合、登録商標とはみなされない。形態を変えて使用した標章の構成において、他人の登録商標 を目立つように表示した場合も、商標権侵害に該当することになる。

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しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。