2022年度華誠代表知財案件

歯ブラシ発明特許権侵害訴訟事件

——(2020)浙01知民初791号

アマゾンのウェブサイトでは、各製品に対して固有の商品詳細ページが設けられており、1つの製品に対し1つのページしか存在しません。そして、アマゾンは当該商品詳細ページに、製品コードとして機能する**1つの「ASINコード」**を割り当てています。

また、アマゾンのウェブサイトでは、商品の色、サイズ、材質、特性、商品名の変更があった場合、新たな商品詳細ページと新しいASINコードを作成しなければならないと規定しています(以下、「ASINコード規定」といいます)。

本件訴訟提起後、被告は日本のアマゾンサイトにて、原告が現在製造している歯ブラシ(以下「原告歯ブラシ」)を複数購入し、原告歯ブラシのアマゾンでの発売時期が本件特許の優先日よりも早いことから、そのASINコードが変更されていない点を理由に、原告歯ブラシの技術的特徴は発売以来変更されておらず、既存技術に該当すると主張しました。さらに、被告はこれに類似した案件における最高人民法院の判例も提出しました。

この最高人民法院の判例は、本件と非常に類似した事案です。この判例では、被告が「ASINコード規定」の文言上の意味に基づき、さらに生活上の常識を根拠として、製品の製造業者が製品の外観や内部構造を改善した場合、通常は新しいASINコードが与えられると主張しました。この事案では、原告が反論しなかったため、最高人民法院は被告の主張を認めました

これに対し、本件の原告は、日本アマゾンに対してASINコードの実際の運用状況を直接照会しました。その回答では、商品に変更があっても、商品詳細ページの記載内容と矛盾しない限り、アマゾンは新しいASINコードを発行しないまま製品の変更を許可しているとのことでした。

さらに原告は、アマゾン上で同一ASINコードでありながら形状の異なる商品が存在している例を確認し、ASINコードが製品の変更を必ずしも伴わないことを裏付けました。これにより、被告の「ASINコードが変わっていない=技術的特徴も変わっていない」という主張は成立しないと反論しました。

これらの事実に基づき、杭州市中級人民法院は、被告が購入した原告歯ブラシが特許の優先日までに公然と公開されたことを証明していないと認定しました。

その結果、被告の既存技術による抗弁は退けられ被告製品による特許権侵害が認められるとの判決が下されました。

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しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。