2022年度華誠代表知財案件

実用新案特許の「技術常識」の判断

——国家知識産権局無効請求審査決定第59599号

 係争実用新案特許は、汚水処理装置に関する技術について保護を求めており、請求項1では、最も近い従来技術と比較して区別される技術的特徴Aとして、汚水処理設備に反応剤を投入する投入口が設けられている点が挙げられている。

 本件における主要な争点は、この区別される特徴Aが技術常識に該当するかどうかである。

 請求人は、上記特徴Aが技術常識であると主張し、その裏付けとして以下の点を提示した:

  • 教科書を証拠として提出し、投入口の存在が広く認識されたものであることを立証しようとした。
  • 加えて、係争特許の背景技術の記載においても、汚水処理装置に反応剤を投入する投入口を設けることは、この分野においてよく見られることであると明記されていることを指摘した。
  • また、反応剤を投入口から投入して反応を促進することは、当業者にとって容易に想到できる手段であると述べた。

 これに対し、特許権者は、最も近い従来技術は浄水分野に属し、係争特許は汚水処理分野であるため、従来技術には投入口を設ける必要がないと反論した。

 これに対して、合議体は以下のように判断した:

  • 汚水処理と浄水処理は、いずれも水処理分野において最も一般的な処理タイプであり、両者に用いられる装置の転用は、当該技術分野において慣用的な技術手段である。
  • また、区別される特徴Aについては、請求人が提出した教科書等の証拠に照らしても、当該分野における技術常識と認められる。
  • 加えて、係争特許自身の背景技術においても、当該特徴が汚水処理分野ではよく見られるものであることが記載されている。

 これらを総合的に踏まえた結果、国家知識産権局は、係争特許の請求項すべてを無効とする決定を下した。

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しかちゃん
東京理科大学知的財産専門職大学院(MIP)卒。 元大手生活用品メーカーの知財マン、後に事業家に転身。 知財マンとして在職中、商標が専門、広告法や模倣品対策も携わり、語学能力を生かし、中華圏と日本の架け橋の役割を担っていた。現在華誠グループの一員として日本企業の中国事業を法律な観点でサポートしている。 このブログでは中国事業の法律問題について発信している。 ワーカホリックであり、スピーディーな対応を重視している。 何かサポートできるものがあれば、お気軽にご連絡ください。